民有林史料調査

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八雲産業株式会社 八雲事業所所蔵史料調査

 徳川林政史研究所では、平成19年度〜平成25年度まで受託事業として、八雲産業株式会社八雲事業所(北海道二海郡八雲町)の「開拓倉庫」に所蔵された史料の調査を実施していました。

 八雲は、尾張徳川家第14代当主の徳川慶勝が、明治11年(1878)に旧藩士の授産のため、政府に願い出て開拓を進めた場所で、尾張藩ゆかりの地です。「開拓倉庫」は、旧藩士による開拓が始まった明治11年に建設されたといわれる木造の蔵で、現在は八雲産業株式会社が管理しています。調査は、毎年夏と秋の2回ずつ実施し、八雲産業株式会社八雲事業所の社有林関係史料や各種帳簿類・図面類などの整理・目録化作業を行っていました。このほか「開拓倉庫」には、尾張徳川家第19代当主で徳川林政史研究所の創設者でもある徳川義親が、大正末~昭和初年に農村美術運動の一環として推進した「八雲農村美術及手工芸品評会」の出品作品のアイヌ刺繍なども残されていました。


2024年8月28日~31日

 研究員の藤田英昭・萱田寛也、非常勤研究員の林幸太郎、非常勤研究生の谷橋啓太が、八雲産業株式会社八雲事業所(北海道二海郡八雲町)にて、所蔵史料の撮影ならびに史料保管状況の確認などを行いました。撮影史料は、徳川農場の沿革や徳川義親に関係する史料が中心でした。
 今回は史料調査に加えて研究員による講演会も実施いたしました。まず29日に萱田が、鷲ノ巣愛林農業協同組合研修会にて「木曽馬の誕生と成長」と題した講演をしました。この講演は、10年近くにわたって研究所が調査している岐阜県中津川市加子母地区の旧家の所蔵史料から得られた研究成果の一部を発表するものでした。講演の後半には昭和40年頃の木曽に暮らす人々の生活や、木曽ヒノキの生産に関係する映像を視聴いたしました。
 また、31日には藤田が、八雲町教育委員会主催の木彫り熊100周年記念イベントにて講演いたしました。北海道のお土産の一つとして木彫り熊は有名ですが、八雲における木彫り熊生産の発端は、義親が滞在先のスイスで木彫り熊を見つけて持ち帰り、八雲の人々の農閑期の副業としてその製作を奨励したことにあります。今年は、北海道で初めて製作された木彫り熊が品評会に出品されてから100年の節目となっていて、八雲町では大変な盛り上がりを見せています。イベントは31日~9月1日の2日間にわたって実施され、スイスの木彫工房の方や、徳川美術館の非常勤学芸員なども講演を行いました。出張参加者はスケジュールの都合上、イベントにはあいにく初日のみの参加となりましたが、町民の方々の木彫り熊への関心の高さをうかがうことができました。
 藤田の講演では「維新期尾張徳川家の役割と八雲移住」というテーマで、八雲開拓にあたって、当時の尾張徳川家当主徳川慶勝がどのような方針をとったか、八雲の人々が慶勝にどのような思いを抱いていたのかなどを報告しました。
 今回調査させていただいた史料や、研究所が所蔵している八雲史料も活用しながら、八雲地域の歴史を研究して地域の方々に還元できればと意を新たにした調査となりました。
 調査中は八雲産業株式会社八雲事業所の方々に格別のご高配を賜りました。末筆ながら御礼申し上げます。


  • 鷲ノ巣愛林農業協同組合研修会
  • 木彫り熊100周年記念イベント

2023年9月1日~3日

 研究員(マネージャー)の藤田英昭と、非常研究員の萱田寛也、同研究生の齊藤みのり、同谷橋啓太の計4人が北海道二海郡八雲町に出張し、八雲産業株式会社 八雲事業所所蔵史料の調査・撮影を実施しました。
 以前は、研究所研究員の指導のもとで研究生が年2回のペースで八雲に出張し、事業所所蔵史料の整理・目録作成作業を実施していましたが、2013年に終了した後は研究所として八雲出張はおこなっていませんでしたので、10年ぶりの出張調査となりました。この間、研究員・研究生の顔ぶれも変わり、調査に参加した若手メンバーは北海道を訪れること自体が初めてという人もいました。
 今回の調査では、おもに以前整理した史料の保存状況を確認するとともに、史料を保管している倉庫の掃除と整理をおこないました。撮影史料はおもに尾張家19代当主で徳川林政史研究所の創設者である徳川義親に関する史料で、ほかに八雲町で開催された品評会の賞状や農業功労者への感謝状なども撮影しました。撮影件数はおよそ60件となりました。
 また、調査期間中の9月2日(日)に鷲ノ巣愛林農業協同組合の研修講演会に参加し、藤田が講演会の講師をつとめました。演題は「徳川義親と木曽山」で、講演の後半では木曽山に関するDVDも視聴しました。調査メンバーは聴講して調査史料に関する理解を深めました。
 出張中は八雲事業所の方々をはじめ八雲町の皆様には大変お世話になりました。この場を借りてあつく御礼を申し上げます。ありがとうございました。


  • 史料の撮影風景
  • 研修講演会の様子

2022年8月29日~31日

 研究員の藤田英昭が、八雲事業所の「開拓倉庫」所蔵史料の確認を兼ねて、9年ぶりに八雲出張に行ってきました。
 この出張には、上廣倫理財団の方お二人も同行して、八雲町役場を表敬訪問し、町長・副町長・教育長にもご挨拶させていただくと共に、町の関係各課の方々と今後の協力関係についても会合を持つことができました。ほかにも、八雲町郷土資料館や木彫り熊資料館、八雲事業所社有林などを見学し、親交を深めることができました。
 調査中は、八雲事業所の皆様に大変お世話になりました。この場を借りて厚く御礼を申し上げます。

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