12月13日(金)に、年度末に刊行を予定している『林政史ブックレット』の構想発表会を、対面とウェブ会議システム(Zoom)併用のハイブリッド形式にて実施しました。『林政史ブックレット』シリーズは、当研究所が継続して実施している岐阜県中津川市加子母地区における史料調査の成果をわかりやすく伝えることを目的に、令和2年(2020)より刊行しています。本シリーズは昨年度までで計9冊となり、本年度も引き続き第10巻・第11巻の2冊を刊行予定です。 当日は、まず第10巻予定の『木材生産を支える人びと』の発表が研究員の萱場真仁によっておこなわれました。本巻は、木々の伐採を請け負った杣やそれを束ねる杣頭といった人びとに注目し、彼らの具体的な活動や生活実態に迫ることを目的とした内容となっています。続いて第11巻予定の『加子母村の朝・昼・夜』の発表が、非常勤研究員の髙木まどか氏によっておこなわれました。こちらは、江戸時代の時間感覚や、山村で暮らす人びとの日常生活を、朝・昼・夜の時間帯や季節の移り変わりを軸に、御山守の日記から詳細にしたものとなります。 今回は参与の松尾美惠子先生や特任研究員の太田尚宏氏、そして史料所蔵者の方にもご参加いただき、史料用語の正しい解釈の仕方やブックレットの構成そのものについての意見・指摘がありました。これらをもとに、年度末の刊行に向けて各自執筆を鋭意進めていきます。 |
8月から9月にかけて、今年度の研究紀要執筆に向けた、特任研究員・非常勤研究員・非常勤研究生による研究発表会を当研究所閲覧室にて実施しました。報告テーマは下記の通りです。 8月23日(金) 松本日菜子「近世名古屋町方における家屋敷所有と女性 ―名古屋橘町裏町を事例に―」 9月6日(金) 坂本達彦「近世「溜沼」の機能と環境維持―上州館林藩領城沼を事例に―」 9月18日(水) 吉成香澄「家斉の御立寄」 松本報告は、名古屋の町方を事例に、女性による家屋敷相続の特徴を考察した発表でした。討論では、報告の前半部分と後半部分の内容面のつながりについて意見が出されたほか、使用史料の性格についても質問がありました。 坂本報告は、館林城の城沼の機能に注目したものです。報告では、城沼は調節池的機能を持っていたこと、沼の環境維持を目的として処分された藻や植物が、周辺地域では肥料として利用されていたことを明らかにし、城沼が人々に恵みをもたらす存在であったことを指摘しました。討論では、城沼の管理維持を担っていた館林藩の役職の詳細など、藩役人側に焦点を当てた質問が多く見られました。 吉成報告は、11代将軍徳川家斉が、尾張藩主徳川斉温(家斉の19男)の屋敷を訪問した際の準備、当日の状況について具体的に明らかにしたものでした。討論では、他の大名家との比較について質問があったほか、研究所所蔵の屋敷図を参照しながら、家斉・斉温や家臣などの当日の行動を確認しました。 いずれの報告についても、発表やその後の質疑応答を踏まえて、論文の構成や方向性が明確になったことと思います。大変充実した発表会になりました。 |
8月2日(金)に非常勤研究員・研究生による夏季研究集会を、公益財団法人上廣倫理財団UFホールにて実施しました。対面での開催は2019年度以来5年ぶりです。なお、一部の参加者はオンライン会議システム(Zoom)にて参加しました。当日は、非常勤研究員・研究生、所員のほか、参与の松尾美惠子先生、特任研究員の川島孝一氏・田原昇氏にもご参加いただきました。発表論題は以下の通りです。 《研究発表》 清水健太「軍楽隊の創設とお雇い外国人」 布川寛大「文政期長州藩への和姫入輿に関する基礎的考察」 林幸太郎「松嶺藩酒井家にみる大名華族の本分家関係―『御附』と『新御分人』―」 萱田寛也「木曽馬の誕生と成長」 《講話》 深井雅海「尾張徳川家の政治空間―『席図』の紹介・分析を中心に―」 《研究発表》では、それぞれの研究テーマに基づいた発表のほか、林政史研究所が進めている事業に関連した発表もありました。史料解釈・論の組み立て方・スライドの見やすさなど、発表者個人ではなかなか気づけない点について参加者からアドバイスをいただきましたので、発表者にとって大いに参考になったと思います。よりブラッシュアップした形で今後も研究を進めていくことを期待します。 《講話》では深井所長より、尾張徳川家における当主や家臣などが政務を行う空間、御目見や申渡しの状況について、名古屋城二の丸御殿と市谷屋敷を事例としてお話いただきました。林政史研究所所蔵の絵図やイラストを用いて講演をしてくださり、二の丸御殿と市谷屋敷の機能的な違いとして、政治空間と儀礼空間が一体化されているか否かという点があることをわかりやすくご説明いただきました。今回の研究集会には、若手の研究生が多く参加しましたので、彼らにとっては尾張徳川家の特質を学ぶ大変貴重な機会になったことと思います。 |
3月1日(金)に非常勤研究員・研究生による春季研究集会をオンライン会議システム(Zoom)にて実施しました。当日は、非常勤研究員・研究生、所員のほか、参与の松尾美惠子先生、特任研究員の川島孝一氏にもご参加いただきました。発表論題は以下の通りです。 《研究発表》 村上博美「学制期における教員養成と学事会議―静岡県を事例に―」 宮澤歩美「明治初年における松代藩公用人」 出野雄也「不二道による相互扶助の実践―文政期下利根川水害を事例に―」 齊藤みのり「明治前期における尾張徳川家と相撲」 栗原健一「明治30年代における国有林下戻し運動―秋田県七日市村長岐貞治の場合―」 上記の発表内容は、当研究所所蔵史料整理作業や、非常勤研究員・研究生各自の関心に基づいて考察したものでした。いずれの発表も要点をコンパクトに配布資料にまとめており、参加者も議論に加わりやすかったように見受けられました。 また、今回の発表の多くが、明治時代をテーマとしていたことも特徴的です。研究員・研究生が関心を持つ時期・テーマともに広がりをみせているといえます。研究集会で得られた多様な知見を、今後の研究所の活動に活かしていきたいと思います。 |
12月8日(金)に、非常勤研究員の萱田寛也氏による研究紀要執筆に向けた研究発表会を、ウェブ会議システム(Zoom)にて実施しました。当日は、非常勤研究員・研究生、所員のほか、参与の松尾美惠子先生にもご参加いただきました。発表論題は以下の通りです。 萱田寛也「近世後期における成瀬家と武家との交際―成瀬正寿を事例に―」 今回の報告は、尾張藩付家老成瀬正寿の病中・葬儀時における大名家・旗本家からの見舞いに注目して、成瀬家と武家との交際の特徴を探ろうとするものでした。 質疑応答の時間では、報告中で使用された「片敬」や「両敬」の定義、正寿の経歴、見舞いに訪れた大名家・旗本家の特徴など様々な視点から意見が出ました。 考察を深めなければいけない点は多岐にわたりますが、引き続き分析を進めてまいります。 |
11月1日(水)・12月13日(水)に、年度末に刊行を予定している『林政史ブックレット』の構想発表会を、対面とウェブ会議システム(Zoom)併用のハイブリッド形式にて実施しました。本ブックレットは、当研究所が継続して取り組んでいる岐阜県中津川市加子母地区の旧家における史料調査の成果をわかりやすく公表する目的で、これまで7冊刊行してきました。今年度も同地域の林政ならびに山村の生活文化についてのブックレットを2冊刊行予定です。 11月1日(水)は、特任研究員の太田尚宏氏と非常勤研究員の芳賀和樹氏による『明治維新と加子母の森林』(仮)と題したブックレットの構想発表がおこなわれました。この巻では、明治維新に入ってからの同地域における森林をめぐる状況や御山守の変化について、森林の官民有区分やそれをめぐる騒動などを中心に紹介した内容となります。また12月13日(水)には、非常勤研究員の林 幸太郎氏と非常勤研究生の仲泉 剛氏による『暮らしをとりまくヒト・モノ・カネ~江戸時代の“かしも生活”④~』(仮)の構想発表がおこなわれました。こちらの巻では、御山守の家に残ってきた日記を中心に、御山守が購入していた商品や家計、そして加子母地区に出入りしていた商人たちとの交流について紹介した内容となっています。 当日は、非常勤研究員、研究生のほかに、参与の松尾美惠子先生や研究協力員、そして史料所蔵者の方にもご参加いただき、史料の文言に関する質問や1冊のブックレットにまとめるに際しての筋道の立て方についての意見が出されました。これらをもとに、年度末の完成に向けて執筆・編集を鋭意進めます。 |
10月13日(金)に、特任研究員の山﨑久登氏による研究紀要執筆に向けた研究発表会を、ウェブ会議システム(Zoom)にて実施しました。当日は、非常勤研究員・研究生、所員のほか、参与の松尾美惠子先生、特任研究員の川島孝一氏、徳川美術館学芸員の方にもご参加いただきました。発表論題は以下の通りです。 山﨑久登「尾張藩領外の鷹場と開発―遠州御鷹浜を事例として―」 山﨑氏は、「鷹場領主」(知行権を有していない土地を鷹場として支配する領主)という概念を用いて、領主と鷹場村々の関係性について精力的に研究を進めています。昨年度は、尾張藩が藩領外に有した鷹場である伊勢国廣瀬野を取り上げ、鷹場支配の様相や、地域住民における鷹場の位置づけなどを考察し、当研究所研究紀要に発表しました(「尾張藩の鷹場と開発―伊勢国廣瀬野を事例に―」『徳川林政史研究所研究紀要』第57号、当研究所ホームページ内「研究紀要」ページにて公開)。 今回の報告は、昨年度と同様に尾張藩が藩領外に有していた鷹場に注目し、「遠州御鷹浜」(現在の静岡県磐田市~浜松市に所在)を事例に取り上げ、御鷹浜を藩はどのように認識していたのか考察するものでした。 報告では、文政期~幕末期に至るまで御鷹浜は、鷹打の場として機能していなかったものの、幕末期に御鷹浜が周辺の村々によって開発されたことを通じて、尾張藩内において所有の意識が生じ、鷹場境杭の設置・鷹部屋の再興といった対策が検討されていったという見通しを示しました。 報告後に質疑応答の時間が設けられ、地方文書の残存状況や廣瀬野の事例との比較のほか、尾張藩が対策を実施するにあたっての藩内部での意思決定の仕組みなどについて意見交換が行われました。 |
8月4日(金)に非常勤研究員・研究生による夏季研究集会をオンライン会議システム(Zoom)にて実施しました。当日は、非常勤研究員・研究生、所員のほか、参与の松尾美惠子先生、特任研究員の川島孝一氏、渋谷葉子氏にもご参加いただきました。発表論題は以下の通りです。 《研究発表》 谷橋 啓太「細川氏の権力編成をめぐる一考察―山城国西岡支配の検討を通して―」 石原 千尋「近世後期における幕府灯油政策の展開―元治期を中心に―」 高田 綾子「寛政期幕府奥医師の勤務形態について―西丸奥医師の職務記録「朝廷日記」から―」 吉成 香澄「御守殿への将軍御立寄」 《講話》 萱場 真仁「木曽代官山村良由とその時代―『良由公日記』の紹介を兼ねて―」 《研究発表》では、非常勤研究員や研究生各自の研究テーマに基づいた発表が行われました。まず、今年度より非常勤研究生に採用された谷橋氏から、細川藤孝による山城国西岡地域における権力基盤の確立過程についての発表がありました。従来、文化史的側面から取り上げられることが多かった藤孝を、織田信長や足利義昭との関係性を視野に入れて、政治史的側面から検討する報告でした。続いて、同様に今年度から非常勤研究生に採用された石原氏から、嘉永~元治期の江戸油市場の流通形態の変化や幕府の動向についての発表がありました。地廻水油問屋の口上書や願書が分析の中心でした。 非常勤研究員の高田氏の発表は、西丸奥医師が残した日記を基にして、幕府奥医師の勤務体制について、江戸城内での詰所にも注目しながら分析したものでした。同じく非常勤研究員の吉成氏の発表は、尾張藩主徳川斉朝の正室で、将軍家斉の長女でもある淑姫の御守殿への家斉の御立寄について考察するものでした。特に文化4年の事例について、御立寄の準備過程、当日の警固、経費などを具体的に分析しました。 《講話》では、研究員の萱場氏より、木曽代官山村良由の治世や人物像について、当研究所所蔵の『良由公日記』を主に用いた報告がありました。名古屋城内における儀礼の様子や、山村良由が代官として勤務していた時期の木曽福島周辺地域の様子など、従来の研究では十分に検討されてこなかった時代の地域の様相について明らかにした内容でした。 いずれの《研究発表》や《講話》においても、内容が豊富だったため、質疑応答では、特任研究員や非常勤研究員を中心に、発表内容や史料の語句にかかわる事項や、今後の研究の方向性についてなど様々な視点からの質問やアドバイスがありました。一方で、内容の豊富さゆえに規定の報告時間を超過してしまう報告もあり、レジュメの構成、時間配分、要点を分かりやすく伝える力の重要性を再認識する機会ともなりました。 |
3月3日(金)に非常勤研究員・研究生による春季研究集会をオンライン会議システム(Zoom)にて実施しました。当日は、非常勤研究員・研究生、所員のほか、参与の松尾美惠子先生、特任研究員の川島孝一氏にもご参加いただきました。発表論題は以下の通りです。 《研究発表》 高橋 喜子「所蔵史料紹介:「紀州文書」について」 宮澤 歩美「所蔵史料紹介:「妙心寺文書」について」 仲泉 剛「鳥取藩江戸定詰に関する一考察」 滝口 正哉「江戸における大型祭礼の構造と類型」 当研究所には未整理の史料群が数多く残されており、非常勤研究員・研究生の協力のもと、少しずつ整理を進めています。高橋氏が紹介した「紀州文書」には、紀州藩主やその家族に関係する史料のほか、丸岡藩士の留守居が書き留めた幕府・各藩の記録が含まれます。高橋氏は、同文書が今後、大名家の奥向や留守居の研究に活用される可能性を持つことを指摘しました。質疑応答では、紀州藩関係の史料と丸岡藩関係の史料が一緒になった経緯や、提示された史料の解釈にも議論が及びました。 宮澤氏が紹介した「妙心寺文書」は、三河国額田郡に所在し、明治期に京都に移転した寺院に関係する史料群です。水害・普請、寺院建立の由緒、再建修造、代替など多様な内容が含まれています。宮澤氏は、妙心寺の来歴や史料群の特徴について紹介しました。質疑応答では、寺院の経営実態や、京都に移転した後の妙心寺の動向について質問がありました。 仲泉氏や滝口氏の発表は、自身の研究テーマに基づいた報告でした。仲泉氏の報告は、鳥取藩を事例に、江戸詰家臣数の変遷について、図表を用いて丹念に分析したものでした。質疑応答では、報告で用いられた「江戸定詰」家という用語の定義や、他藩との比較にまで議論が及びました。 滝口氏の報告は、山王権現や神田明神などで実施された大型祭礼を取り上げて、山車・行列・神輿の巡行の視点から類型化を試みるものでした。質疑応答では、祭礼に参加した人々の意識や、氏子の位置づけについて自らの体験を交えた質問もありました。 今回の研究発表は、いずれも発表の構成が分かりやすく提示されていたため、参加者も議論に加わりやすかったように見受けられます。今後、研究集会や講座などで発表する機会が増えるであろう若手の非常勤研究生にとっては、大変有意義な会になったと思います。 |
11月30日(水)、12月9日(金)に、今年度末の刊行を予定している『林政史ブックレット 尾張藩の林政と森林文化』第6巻、7巻の執筆に向けて、両巻の執筆者による報告会が下記の通り実施されました。 11月30日(水) 『林政史ブックレット 尾張藩の林政と森林文化』第7巻執筆者による報告会 報告者:髙木まどか、萱田寛也 12月9日(金) 『林政史ブックレット 尾張藩の林政と森林文化』第6巻執筆者による報告会 報告者:淺井良亮、萱場真仁 『林政史ブックレット』は、当研究所が実施している岐阜県中津川市加子母地区の個人史料調査の成果を普及する目的で、現在、第5巻まで刊行されています。第6巻では、加子母村の自然災害によって発生した枯損木や風倒木、さらには日々の生活のなかにおける雑木の活用について取り上げます。第7巻では、加子母村における出産、子育て、婚姻、家族の構成、病気、介護といった人々のライフサイクルについて取り上げます。 報告会には参与の松尾美惠子先生や非常勤研究生のほか、史料所蔵者の方にもご参加いただきました。質疑応答では、各自の報告に関連した個別的な質問だけでなく、ブックレット1冊を通じた構成にまで議論が及びました。共著ならではの難しさを感じましたが、執筆者相互のコミュニケーションを深めて、年度末の刊行に向けて準備を進めてまいります。 対面とオンライン(Zoom)を併用したハイブリッド方式で実施しました。 |
10月14日(金)に、特任研究員の山崎久登氏による研究紀要執筆に向けた研究発表会を、ウェブ会議システム(Zoom)にて実施しました。当日は、非常勤研究員・研究生、所員のほか、参与の松尾美惠子先生や徳川美術館学芸員の方にもご参加いただきました。発表論題は以下の通りです。 山崎久登「伊勢における尾張藩鷹場と開発―下からの鷹場領主形成―」 報告は、尾張藩が藩領外に有する鷹場を取り上げ、鷹場内の土地を開発しようとする領民が、領主ではなく、鷹場を支配する尾張藩に新田開発の許可を求める動きが見られることに注目し、領民の側から「鷹場領主」を形成する過程について考察するものでした。質疑応答では、取り上げた地域の当時の状況、他藩においても同様の事例は見られるのか、領民が領主ではなく尾張藩を頼った理由などについて意見交換が行われました。 |
8月5日(金)に非常勤研究員・研究生による夏季研究集会をオンライン会議システム(Zoom)にて実施しました。当日は、非常勤研究員・研究生、所員のほか、参与の松尾美惠子先生、特任研究員の川島孝一氏、渋谷葉子氏にもご参加いただきました。発表論題は以下の通りです。 《研究発表》 小松 和史 「大道米舂の成立と御用人足」 松本 日菜子 「名古屋町方における家屋敷所有と女性」 布川 寛大 「長州藩における『海防臆測』の受容と展開」 《講話》 藤田 英昭 「徳川林政史研究所の開設と戦前期の活動」 《研究発表》では、今年度から採用された非常勤研究生による個人研究の発表が行われました。表や画像も使用しながら、限られた時間内でも参加者に理解を深めてもらおうとする工夫が見られました。質疑応答では、用語の確認のような基本的な事柄だけでなく、先行研究との差異や史料解釈など発表の内容に関連するアドバイスも出され、発表者にとって、今後の研究を進めていくうえで大いに参考になったと思います。 《講話》では、当研究所の設立から戦前・戦中の動向を、当時の日記や写真を豊富に用いて所員が解説しました。戦前期の動向については知られていない出来事が多く、質疑応答では、戦後期の活動との比較や、当時の社会情勢との関連についても言及がありました。 |
3月4日(金)、春季研究集会をオンラインで実施しました。非常勤研究員・研究生による当日の発表論題は下記の通りです。 《研究発表》 萱田 寛也 「病気見舞い・葬儀・法要からみる成瀬家と武家との交際―成瀬正寿を事例に―」 齊藤 みのり「史料紹介:海西郡文書 服部家・木下家を中心として」 西 光三 「『海外航免許一件附録』に見る『経文緯武』『日本政府之印』製作の一側面について」 長沼 秀明 「明治15年森林法草案をめぐる対立」 今回は、個人研究の発表とあわせて、研究所所蔵史料の整理や犬山・加子母調査の成果発表がおこなわれました。夏季研究集会と同様、新型コロナウイルス感染防止の観点からオンラインでの開催となりましたが、来年度採用予定の新研究生も参加し、活発な議論が交わされました。 |
下記の通り、去る11月26日(金)と12月6日(月)に、今年度の紀要執筆に向けた所員の研究発表会を対面とオンラインを併用して実施いたしました。 当日は、研究所関係者だけではなく、出張調査先の史料所蔵者、研究協力を取り交わしている犬山城白帝文庫の学芸員、姉妹館である徳川美術館の学芸員のみなさんがオンラインでご参加くださり、さまざまな意見をいただきました。 ご参加いただいたみなさまに御礼を申し上げます。 11月26日(金) 林 幸太郎 「同郷会からみる近代の犬山城と成瀬家」 12月6日(月) 萱場 真仁 「近世中期加子母村における鳥黐生産の秩序形成」 藤田 英昭 「尾張徳川家『押付』養子に関する一考察」
|
11月8日(月)、今年度刊行を予定している『林政史ブックレット 尾張藩の林政と森林文化』第5巻の執筆に向けて、非常勤研究員の栗原健一・髙木謙一両氏による研究発表がオンラインで開催されました。 『林政史ブックレット』は、現在研究所が実施している岐阜県中津川市加子母地区の個人所蔵史料調査の成果を普及する目的で、現在第4巻まで刊行されています。今年度刊行の第5巻では、御山守による森林の取り締まりや、村方と御山守との関係についてわかりやすく紹介する予定です。 発表では各執筆テーマにもとづき、栗原氏が御山守による濃州三ヶ村の森林見廻りや盗伐の取り締まりの様相について、髙木氏が村方によるヒノキ利用の実態と家屋普請用材調達に際しておこなわれる御山守の見分についてそれぞれ発表しました。 オンライン開催ということもあり、研究所関係者に加えて、史料所蔵者の方や調査にご協力いただいている方にもご参加いただき、史料文言などについて意見交換することができました。いただいた意見を参考に、年度末の刊行に向けてより洗練された内容に仕上げていきたいと思います。 |
10月8日(金)、研究紀要執筆に向けて、以下の研究会をオンラインで開催しました。 渋谷葉子「尾張徳川家江戸屋敷の家臣『外宅』」 尾張家家臣の居住のあり方に「外宅」という形態があったことに注目した発表です。 切絵図に画かれた意外な事実や「外宅」の実態に迫っています。詳細は今年度末刊行の『研究紀要』で発表予定です。 オンライン開催であったことから、 研究所関係者だけではなく、上廣倫理財団の方々や徳川美術館学芸員も参加し濃密な議論ができました。 |
8月6日(金)、約2年ぶりの夏季研究集会がオンラインで実施されました。当日の発表論題は下記の通りです。 《研究発表》 鈴木 葵 「明治初期下総牧開墾と地域社会―豊四季村における東京窮民の動向を事例に―」 村上 博美 「明治前期における地方教育行政の変遷―静岡県の小学校制度を事例に―」 田口 拓海 「明治前期における合併村の村政構造―長野県下の合併村を事例に―」 高橋 喜子 「紅葉山文庫における武家諸法度の保存と管理」 今回は、昨年度採用された若手研究生による研究発表がおこなわれました。新型コロナウイルス感染 防止の観点からオンラインでの開催となりましたが、遠方を含む多くの方々の参加を得て、充実した議 論となりました。 今後もオンラインを併用しつつ、より活発な研究活動をおこなっていきたいと思います。 |
当研究所では、尾張藩祖徳川義直の年代記である『源敬様御代御記録』を、八木書店から全四巻の史料纂集として刊行致しましたが、引き続き2代当主徳川光友治世下の家中や社会の出来事をまとめた『瑞龍公実録』の編集作業を3年前から進めてきました。 史料入力および註記作成・校正などの編集全般は、所員だけではなく、若手の非常勤研究員・研究生も精力的に関わり、『源敬様』と同様、八木書店の史料纂集として今年度末に刊行する予定です。 編集に関わった若手研究生には、『瑞龍公実録』に関わる各テーマに基づいて、解題を執筆していただく予定ですが、それに先だって7月7日(金)、研究所閲覧室において、下記のラインナップで研究会を実施しました。 藤田 英昭「『瑞龍公実録』について」 池ノ谷匡祐「徳川光友・綱誠の参勤交代」 萱田 寛也「徳川光友の湯治とその背景―横須賀御殿における湯治を中心に―」 林 幸太郎「『瑞龍公実録』にみる喧嘩と敵討」 川島 孝一「『瑞龍院様御代奉書并御書付類之写』について―内容紹介―」 解題執筆は、史料読解の力量は当然必要なのですが、論を展開する論文や、事実を明らかにする研究とは異なります。限られた分量で、いかに史料の魅力や特徴を読者に伝えられるかが問われる作業です。 若手の研究生には、自身の専門や研究テーマを深めていくのはもちろんですが、それだけではなく、専門以外の分野にも目配りし、研究所の史料を活用するなどして、広い視野で歴史を見る目を養っていただきたいと思っています。 |
新型コロナウイルスの感染拡大から、当研究所では、昨年度の春季研究集会と今年度の夏季研究集会は中止とし、しばらく研究会を開催していませんでしたが、下記のように、犬山調査の成果を発表する研究会を所内で実施しました。 9月14日(月) 林 幸太郎 「大名華族と同郷会―旧犬山藩主成瀬家を事例に―」 10月23日(金) 池ノ谷 匡祐 「尾張藩主の犬山御成―天保期斉荘の事例を中心に―」 犬山調査は、平成28年(2016)から当研究所の若手研究者(非常勤研究生)が中心となり進めてきました。その成果は、地元開催の古文書講座や、シンポジウム等で発表してきましたが、上記2つの発表は、研究論文としてまとめるための準備報告として行われました。 林報告は、旧犬山藩主である成瀬家と犬山の「同郷会」を素材に、近代における大名華族(旧藩主家)と地域の結びつきを検討したものです。特に、大名華族である成瀬正雄の意識や行動に注目した点に大きな特徴があります。犬山成瀬家は、もともと尾張藩の付家老でしたが、明治維新期に尾張藩から独立して犬山藩主となり、華族制度発足後は男爵(のちに子爵)となった家です。立藩の事情が特殊であるだけに、近代成瀬家の研究は、近年盛んな華族研究においても興味を惹きそうです。 池ノ谷報告は、尾張藩主による犬山御成(おなり)に注目し、なかでも天保期における12代藩主徳川斉荘(なりたか)の御成をとりあげました。斉荘はいわゆる将軍家からの「押し付け養子」として著名な藩主ですが、反発する尾張藩内を鎮めるためにお国入りし、約100年ぶりに犬山御成を挙行しました。犬山だけではなく、岐阜・知多などにも出向いたことが知られています。犬山城松之丸御殿での献上儀礼など、歴代藩主の場合と比較することで、斉荘の犬山御成の意味が明確になりそうです。 上記2つの発表は、今年度発行の紀要に掲載できるよう準備を進めているところです。 |
下記の通り、研究発表会を実施しました。
12月2日(月)
田原 昇 「濃州三浦山・三ヶ村御山守内木家の出自と御山守就任事情」 12月9日(月) 萱場 真仁 「加子母村の林産物と周辺地域―櫛木生産を中心に―」 藤田 英昭 「ペリー来航をめぐる徳川慶勝の情報収集活動―『諸品新聞書』を中心に―」 田原報告と萱場報告は、当研究所が近年取り組んでいる岐阜県中津川市加子母地区の個人所蔵史料調査の成果に関する報告でした。田原報告は一般的に裏木曽と呼称される濃州三ヶ村において代々尾張藩の森林管理に携わる「御山守」に就任していた内木家の出自に関して、由緒書や地誌などをもとに迫ろうとするものでした。 萱場報告は、加子母村における林産物生産の様子について、特にそのなかでも櫛の原木である「櫛木」の生産にスポットを当てながら、当時木曽の宿場町で盛んに生産されていた櫛の製作と絡めて論じました。 藤田報告は、徳川林政史研究所が所蔵している「諸品新聞書」という史料を手がかりに、ペリー来航期における尾張藩主徳川慶勝の情報収集活動と、慶勝の人物像について考察したものでした。 上記報告内容は、今後紀要やその他刊行物等で成果として発表していけるようにまとめていきたいと思います。 |
下記の通り、研究発表会を実施しました。 10月25日(金) 池ノ谷匡祐 「尾張藩主の犬山御成 ―天保期斉荘の事例を中心に―」 11月20日(水) 滝口 正哉 「尾張藩附家老成瀬家家臣中野熊助の職務動向と由緒意識」 いずれも、数年前から当研究所が実施してきた犬山調査に関する成果発表です。 池ノ谷報告は、尾張藩主による犬山御成の政治的意味についてまとめ、滝口報告は、研究所に所蔵されている成瀬家家臣中野熊助文書の内容紹介を兼ねた報告でした。なお、中野熊助文書は整理が終了しましたので、本年度刊行の紀要で史料目録を公開する予定です。 |
下記の通り、上廣歴史文化フォーラム「大奥に生きた女性たち」に向けた研究発表会を実施しました。 10月9日(月) 吉成 香澄 「千代姫にみる将軍姫君の婚姻」 高田 綾子 「徳川将軍家の乳母 ―春日局とその後の変化― 」 渋谷 葉子 「旗本の妻・川路高子の生き方」 上廣歴史文化フォーラム「大奥に生きた女性たち」は、非常勤研究員・研究生のみで構成される教育普及活動です。パワーポイントを活用する予定ですので、参加者からは見やすさ、わかりやすさを重視した意見が多く寄せられました。 |
2019年7月26日(金)、毎年恒例の夏季研究集会が(公財)上廣倫理財団UFホール(千代田区三番町)で実施されました。 当日発表の内容は以下の通りです。 《研究発表》 宮澤 歩美 「幕末維新期における帝鑑間譜代の動向 」 鈴木 彩加 「『源敬様御代御記録』からみる御成と贈答」 髙木 まどか 「寛文~宝暦の遊女評判記にみる吉原遊廓の客」 竹内 竜馬 「近世中・後期における北国街道上田宿の特質-天保期の町在商一件の側面から-」 芳賀 和樹 「大正期奈良県吉野郡永田藤兵衛家の製材事業」 《加子母調査関連発表》 仲泉 剛 「加子母村の農事暦-明和5年の『御山方御用并諸事日記』から-」 萱場 真仁 「江戸時代の加子母村における林産物生産と御山守内木家 」 今回は若手研究生、研究員による研究発表と、現在林政史研究所が取り組んでいる加子母調査の成果報告が行われ、フロアからさまざまな意見が出されました。特に加子母調査の成果発表は、今回いただいた意見をもとにブラッシュアップしたものを、地元での講演会や論文等で今後活かしていけるようにしたいと思います。 また、今回の研究集会では研究所のOBで、現在特任研究員でいらっしゃる佐藤孝之先生による「私の山村史研究の歩みと現在の取り組み」と題した特別講話が設けられました。佐藤先生は、研究所におけるこれまでの経験や活動、ならびに現在取り組んでおられる研究を通じて、自分のメインテーマを一つ据えたうえで、幅広い視野を持って研究を続けていくことの重要さについてお話されました。出席した研究員・研究生は、普段なかなかうかがえない先生の講話を熱心に聴講していました。
|
2019年3月1日(金)、雑司が谷地域文化創造館で春季研究集会が開催されました。 内容は以下の通りです。 林 幸太郎 「旧庄内藩の士族授産 ―松ヶ岡開墾場と榊原十兵衛― 」 高木 謙一 「佐倉牧内矢作牧周辺村々における林産資源の管理と利用」 《所蔵史料調査関連発表》 萱田 寛也 「尾張藩医野間林庵家にみられる由緒意識」 《犬山調査関連発表》 池ノ谷匡祐 「犬山城犬山城白帝文庫所蔵老中奉書に関する一考察」 《加子母調査関連発表》 芳賀 和樹 「加子母内木家文書調査について」 萱場 真仁 「内木家文書所収『御用状留』について ―作業の進捗報告と記事内容の紹介― 」 《女性史・大奥関連発表》 渋谷 葉子 「川路高子について」 今年も個人の研究発表以外に、研究所の事業に関わる発表が多くありました。
|
下記の通り、研究紀要執筆に向けた研究発表会を所内で開催致しました。 11月12日(月) 萱場 真仁 「寛政改革期における弘前藩林政の展開と模索 ―山方と郡方の対立を中心に― 」 栗原 健一 「近世後期における山村の地域議定 ―出羽国秋田郡小猿部『一沢』を事例に― 」 12月3日(月) 藤田 英昭 「幕末政局における徳川慶勝の動向と政治的立場 ―文久三年下半期から元治元年初頭を中心に― 」 12月27日(木) 芳賀 和樹 「尾張藩の植林政策と『三浦・三ヶ村御山守』」 さまざまな指摘を受けました。充実した論文となるよう、頑張りたいと思います。 |
7月27日(金)、夏季研究集会が(公財)上廣倫理財団UFホール(千代田区三番町)で実施されました。当日の発表者と論題は以下の通りです。 《研究発表》 林 幸太郎 「明治初年における旧庄内藩士族の動向-禄制改革を中心に-」 齊藤 みのり 「甲府城下町における江戸相撲興行の展開」 藤田 英昭 「徳川慶勝が見た幕末の京都-所蔵史料紹介をかねて-」 《犬山調査関連研究発表》 仲泉 剛 「慶応四年における『入鹿切れ』とその復興-明治元~3年の河内屋堤修復を中心に-」 《女性史研究関連研究発表》 中村 洋子 「小噺にみる江戸女性の姿」 今回は個人の研究発表と併せて、犬山調査関連の発表や女性史研究関連についての発表も行われました。 当研究所では、平成28年度から犬山城白帝文庫と研究協力を交わして、「成瀬家文書」の調査・研究を進めています。また、女性史や大奥に関する研究についても取り組んでいます。今回の研究集会では、これらの調査・研究成果の一環として、当研究所所蔵史料を駆使しながら犬山地域の歴史を解明しようとする発表や、庶民の生活のなかにおける江戸時代の女性像に関する発表がありました。 また、今回も研究員・研究生への指導的意味を込めて、特任研究員の松尾美惠子先生による「史料との出会いと研究テーマの発見 -榊原家史料をめぐって- 」と題した特別講話が設けられました。
|
昨年度に引き続き、今年も犬山城白帝文庫のみなさまとこれまでの調査・研究の成果報告を兼ねたミニ研究会を下記の通り開催することができました。 日時:5月21日(月) 会場:城とまちミュージアム(犬山市) 発表者・演題 滝口正哉氏(当研究所研究員) 「成瀬氏家臣中野熊助の由緒意識と中野家文書 筧真理子氏(白帝文庫学芸員) 「犬山藩の成立と犬山城下町」 両発表とも、成瀬氏の直臣や家臣団に関するものでした。 滝口氏の発表は、当研究所所蔵「成瀬家家臣中野熊助文書」の整理経過報告を兼ねたものでした。同文書群は書状類が大半で、幕末期の風説書も多数含まれるとのこと。発表では、おもに中野熊助の履歴を踏まえながら、嘉永期に中野一族が先祖調査を行った書状などををもとに、その実態を紹介しました。質疑応答では、彦根城主井伊家に由緒を持つ中野氏が、先祖調査を意識する契機は何か、などが議論になりました。また、成瀬家家臣の系譜などを突き合わせて、井伊家や旗本にまで広がる中野一族全体の系図を見通すことが今後の課題となりました。 筧氏の発表は、江戸中期から後期・明治初年に掛けての犬山城下絵図を比較しながら、城下町が変貌していく様子を通観したものでした。城下における武家屋敷配置などの基本構造を踏まえ、特に幕末維新期に成瀬氏家臣が江戸・名古屋から、在所の犬山に引き上げてきたことを切っ掛けに、城下町に武家地が出現していく様子を絵図から読み解いていきました。明治以降の犬山士族が城下に住み続けたのかどうか、また、成瀬氏以外の万石以上家臣の在所のありようはどうか、などが議論の中心となりました。 今後も犬山城白帝文庫とは、引き続き相互交流を重視した活動を展開していきたいと思います。
|
3月2日(金)に春季研究集会が、豊島区立生活産業プラザ 会議室(豊島区東池袋)にて開催されました。当日の発表論題は以下の通りです。 《研究発表》 塚田 沙也加 「『歳中行事記』に見える進物番の職務-正月の記事を中心に-」 高田 綾子 「大奥女中の職制における徳川幕府の〈乳母〉をめぐる一考察-御乳人を中心に-」 髙木 謙一 「江戸幕府の崩壊と牧場経営の変容」 芳賀 和樹 「秋田藩の森林管理と御山守」 長沼 秀明 「加子母の山をめぐる裁判-代言人の役割-」 《徳川林政史研究所所蔵史料調査報告》 萱場 真仁 「王滝村松原家文書にみる御山守内木家と松原家との関わり」 櫻庭 茂大 「王滝村松原家と御嶽神社-信濃国筑摩郡王滝村松原家文書を中心に-」 今回の研究集会では、個人の研究発表だけではなく、これまで研究員・研究生による集中史料整理で扱ってきた王滝村松原家文書の調査報告や、次年度から調査・研究に着手する予定の岐阜県中津川市加子母地区に関する研究発表が行われました。 加子母地区に関する研究発表では、次年度からの調査・研究対象となることもあって、フロアから史料の来歴などについて多くの質問が出されました。これらの成果も踏まえて、次年度からの調査・研究により一層熱心に取り組んでいきたいと感じた次第です。
|
11月24日(金)に、本年度の紀要執筆に向けて当研究所研究員の藤田英昭氏による「慶応四年前後における尾張徳川家の政治動向」の発表が、徳川林政史研究所閲覧室にて行われました。 今回の発表は、慶応3年末~明治2年にかけての尾張徳川家の動向と徳川慶勝の意識について、当研究所が所蔵する慶勝関係書状や、名古屋市蓬左文庫が所蔵する尾張藩士の水野彦三郎関係文書から考察したもので、藤田氏は慶応3年末~4年にかけての徳川慶勝の背後には藩校明倫堂関係者が関わっていたこと、尾張藩は新政府軍として行動するが水面下で徳川家存続に動いていたことなどを論じました。 発表後の質疑応答では、個々の史料の内容を整理してまとめていくことの重要さについて出席者から指摘がありました。
|
当研究所は、昨年度から犬山城白帝文庫と調査・研究協力を交わして「成瀬家文書」の調査・研究を進めていますが、これまでの成果報告を兼ねたミニ研究会を11月13日(月)に犬山市の城とまちミュージアムで開催することができました。参加者は「成瀬家文書」の調査に参加した当研究所メンバーと犬山城白帝文庫・犬山市文化史料館の職員の方々、計8名でした。報告者と演題は以下の通りです。 池ノ谷匡祐氏(当研究所研究生) 「尾張藩主の御成―犬山御成を中心に―」 寺岡 希華氏(白帝文庫学芸員) 「犬山での尾張藩主への饗応について」 池ノ谷氏の報告は、尾張藩主による領国への御成を全体的に把握したうえで、歴代藩主による犬山御成の実態を史料で跡づけた報告でした。特に天保期における犬山御成の政治的意義を指摘した点で注目できます。議論では御成先が犬山なのか、それとも成瀬家なのか、成瀬家が尾張藩主を接待する意味、御成を受ける成瀬家の立場の特殊性などが論点として提示され、今後の成果論文作成に向けてどの点に焦点を据えるかなど方向性が示されました。 寺岡氏の報告は、過去の展覧会(平成25年特別展「城主のおもてなし」展)の成果をもとにしながら、犬山に御成した尾張藩主へ供された料理を具体的に紹介した報告でした。いつから尾張藩主への饗応がなされたのか、料理費の支出元は尾張家か成瀬家かなど、池ノ谷報告と関連づけた討論となりました。 これまで、外部の機関と連携して研究発表会を実施することはなかったので、新鮮な発表会となりました。犬山城白帝文庫とは、引き続き相互交流を重視した活動を展開していきたいと思います。
|
10月27日(金)に、非常勤研究員である栗原健一氏による研究発表会が、徳川林政史研究所閲覧室にて実施されました。 報告タイトルは「近世後期村落における『山崩』と庄屋役-出羽国最上郡南山村を事例に-」で、内容は東北に位置する出羽国新庄藩領の山村地域を事例に、土砂災害に対する村々の動向や庄屋役の役割を検討することによって、従来畿内・近国を中心に捉えられてきた江戸時代の山村地域と土砂災害との関係を見直そうとするものでした。 発表後の質疑応答では、扱っている史料の来歴や性質について質問や意見が多く出されました。また、「山崩」・「山落」などの山間部の災害を示す史料文言の違いについての質問もあり、史料を正しく解釈するためには登場する文言や役職名について特に注意して読む姿勢が重要であると、所長から発表者および若手研究生に向けてアドバイスする場面も見られました。 今回の発表で出された指摘や意見を踏まえ、より洗練された論文の完成が期待されます。
|
小田原藩の地域史研究を精力的に進めている非常勤研究生の桐生海正氏による研究発表が、8月10日(木)に林政史研究所の閲覧室で行われました。 報告タイトルは「小田原藩における漆専売制の確立」で、「国産国益」化政策を志向する小田原藩が、文化年間に漆専売制を領内に導入したことで、地域社会がいかなる影響を受けていったのかを検討した発表でした。 今回の研究発表は、特任研究員の太田尚宏氏や非常勤研究員の長沼秀明氏といったベテラン勢も参加して下さいました。 質疑応答では、報告内容に対する指摘だけではなく、研究史の捉え方や論文構成上の問題点、史料の残存状況を踏まえた論の組み立て方など、論文作成に当たっての方法論的なことにも指導が及びました。 桐生氏には、指摘・指導されたことを踏まえて、より精度の高い論文を完成されることを期待します。
|
7月28日(金)、毎年恒例の夏季研究集会が(公財)上廣倫理財団UFホール(千代田区三番町)で実施されました。 当日の発表者と論題は以下の通りです。 竹内 竜馬 「近世中・後期における北国街道上田宿の特質 -寛政期町在商一件の側面から-」 萱田 寛也 「加賀藩の医療対策」 仲泉 剛 「加賀藩江戸勤番武士の研究 -江戸藩邸における統制実態-」 池ノ谷 匡祐 「尾張藩主の御成 -犬山御成を中心に-」 川島 孝一 「徳川義直の人物像」 萱場 真仁 「ヒバをめぐる弘前藩領の人びと」 今回は修士論文作成に向けての若手研究生の報告と、尾張藩に関する報告、そして秋に開催予定の公開講座の中間発表が行われました。 林政史の研究集会に限らず、一般的にここ数年来の研究発表といえば、史料や表が大部になって、配布資料が大量になる傾向があるかと思いますが、今回の研究集会でも、限られた時間内でいかに効率よく自分の主張を聞き手に説得的に伝えられるか、といったことが課題となった研究集会だったと思います。研究の個別分散化の問題も指摘されて久しいですが、常に全体史の中で自分の研究がいかに位置付くのか、意識的に考えることの重要性も改めて感じました。 また、今回も若手研究者への指導的意味を込めて、深井雅海副所長による「歴史史料の複合的な読み方」と題した特別講話が設けられました。 深井副所長の講話は、江戸城本丸御殿内での儀礼を中心にしたお話でした。御殿内での営みは、日記などの文献史料だけでは、実態を明らかにすることは難しく、実態を把握する上で効果的なのは、絵図であり図譜であるということで、絵図資料の読み方をご指導いただき、改めてその重要性を認識できました。
|
3月3日(金)に非常勤研究員・研究生による研究発表が、豊島区立生活産業プラザ 会議室501(豊島区東池袋)にて開催されました。当日の発表論題は以下の通りです。 《個人研究発表》 藤井 明広「旧交代寄合知久家の明治維新-喬木村歴史民俗資料館所蔵『知久家文書』の検討を中心に-」 吉成 香澄「天保期御住居入用-越前松平家浅姫御住居について-」 櫻庭 茂大「近世後期における農民と文人の交流―『禦蛮策』を事例に―」 田原 昇 「享保二十年の天下一統支干相当祝儀に関する一考察」 《徳川林政史研究所所蔵史料調査報告》 仲泉 剛 「尾張国葉栗郡極楽寺村文書について」 滝口 正哉「成瀬氏家臣中野熊助の由緒意識」 渋谷 葉子「『中村修旧蔵書』の整理を終えて」 研究報告では、近世から近代にかけての村役人が抱いていた国内情勢に関する意識、幕府や藩の財政事情、大坂の陣に対する意識の変遷など、さまざまなジャンルの報告がなされました。各報告後の質疑応答では、語句の定義や史料の性質などについて質問・意見が出されました。 また徳川林政史研究所では、普段アルバイトで非常勤研究員・研究生のみなさんに未整理文書の整理・目録化作業を手伝ってもらっています。今回の研究集会では、文書整理の担当者から、史料の内容説明とともに、史料を活用してどのような研究ができるのかを報告してもらい、所内で情報を共有する機会を設けました。 実際に史料を整理しなければわからない情報も多く、フロアからは文書群の伝来や史料の構成なども含めて、多くの質問が出されました。今回報告で取り上げられた史料群は、いずれも尾張藩研究はもとより地域史研究に寄与しうる良質の史料であり、今後これらを公開・活用することによって、より一層の研究の進展が望まれると感じた次第です。
|
11月25日(金)に当研究所研究員の研究発表会が徳川林政史研究所閲覧室にて実施されました。出席者は、所長、副所長をはじめ9名でした。 まず、萱場真仁「弘前城下の檜物師・曲物師たちと幕末弘前藩林政」の発表が行われました。内容は、嘉永・安政期における弘前藩領内の山林荒廃に対処しようと、ヒバ材の使用差し止めの方針を打ち出した藩と、城下町弘前でわっぱなどを製造・販売する曲物職人たちの間で発生した対立から、当該期の弘前藩林政の問題を追究したものでした。 続いて、藤田英昭「嘉永・安政期における徳川慶勝の政治動向」の発表が行われました。内容は、徳川慶勝の書状などを用いながら、両家年寄(付家老)・年寄(執政)・御側御用人(参政)と慶勝との関係に注目しつつ、嘉永・安政期における尾張徳川家の意思決定の過程、および徳川慶勝の立場・政治的動向を検討したものでした。 |
10月24日(月)に、非常勤研究生である橋本佐保氏・高田綾子氏と、日本学術振興会特別研究員PDの芳賀和樹氏による研究発表会が、徳川林政史研究所閲覧室にて実施されました。出席者は、所長・副所長、特任研究員である松尾美惠子先生以下11名でした。 まず、橋本佐保氏による「『よしの冊子』掲載記事の傾向と分析」の発表が行われました。内容は、松平定信が老中に就任する頃の風聞を集めた「よしの冊子」から、頻出単語をデータベース化し、筆者である水野為長の情報収集の目的と情報源を明らかにすることで、史料の性格に迫ったものでした。 続いて、高田綾子氏による「尾張徳川家初代義直正室高原院(春姫)に関する一考察」の発表が行われました。内容は、一昨年から研究所が編纂し八木書店から刊行している『源敬様御代御記録』などの史料をもとに、婚姻や江戸への下向、葬儀など、高原院(春姫)の基礎的事実をまとめ、人物像の解明を試みた報告でした。 最後に、芳賀和樹氏による「秋田藩における御札山の資源管理」の発表が行われました。内容は、「御札山」と呼ばれる禁伐林について、設定された年代や場所、各時期における様相を考察し、秋田藩領における「御札山」の実態を検討したものでした。 発表終了後には、史料の文言や内容に関する質疑応答だけではなく、論文構成や史料読解に当たっての意見なども出されました。
|
9月26日(月)に、徳川林政史研究所閲覧室にて研究発表会が実施されました。今回の発表は、今年度飛騨とたつので開催する公開講座(シンポジウム)へ向けてのもので、いずれもパワーポイントを使用しての発表となりました(公開講座の詳細については「教育普及活動」のページをご覧ください)。 最初に、飛騨関連の発表として、萱場真仁「暮らしを支える飛騨の山林」の発表が行われました。内容は、これまで幕府による御用材生産との関連で語られることが多かった飛騨の山林について、それらが百姓や領民たちにどのように利用されてきたのか、また飛騨の山林と彼らとの関係はどのようなものだったのかを検討するものでした。 続いて、たつの関連の発表に移りました。これまで徳川林政史研究所では、たつの市立龍野歴史文化資料館に所蔵されている「三木家文書」の整理・調査を行ってきました。「三木家文書」は、赤穂藩領那波村(現・兵庫県相生市)の庄屋を代々勤めてきた家に伝来する文書群で、今回の発表はいずれもこれら文書群の調査成果をもとにしたものとなりました。 まず高木謙一氏による「近世那波村の人々と暮らし」の発表が行われました。内容は、村明細帳や宗旨人別帳をもとに江戸時代の那波村の様相や人びとの生活を考察するものでした。 次に、藤田英昭「三木家文書に見る那波村の事件簿-『萬覚日記』を中心に-」の発表が行われました。内容は、「萬覚日記」を素材として、赤穂事件と那波村の関係を中心に検討したものでした。また関連史料から、討ち入りに参加した浪士神崎与五郎と那波村の人びととの交流についても扱いました。 各発表終了後には所長・副所長をはじめとする参加者から内容に関する質問はもちろんのこと、分かりやすいスライドにするにはどうすれば良いかなどのアドバイスもありました。今回のアドバイスを受け、各報告ともシンポジウム本番へ向けて内容・形式面ともにより良いものになることを目指します。 |
8月10日(水)に、当研究所の非常勤研究生である桐生海正氏の研究発表会が、徳川林政史研究所閲覧室にて実施されました。 今回の発表は、「明治初年小田原藩における生産方の設置と炭の流通統制-神縄村佐治兵衛の動向を中心に-」というタイトルで行われました。内容は、小田原藩における幕末から明治初年にかけての炭の流通統制と、江戸で炭の生産・販売を行っていた村々の対立の事例から、藩と地域を結ぶ役割を担った村名主の動向を検討したものでした。 発表終了後には質疑応答がなされ、史料の文言や小田原藩の国産統制策など、内容に関する質問はもちろん、主軸をどこに据えて発表・論文化すれば良いかに至るまで、様々な質問・意見・アドバイスが出席者から出されました。
|
7月29日(金)に非常勤研究員・研究生による研究発表が、公益財団法人 上廣倫理財団UFホール(千代田区三番町)にて実施されました。当日の発表論題は以下の通りです。 仲泉 剛 「近世後期における江戸勤番武士の統制とその実態 -加賀藩江戸勤番武士の外出行動を中心に-」 柴田 愛 「熊本藩の江戸湾警備-警備諸藩とのつながりを中心に-」 池ノ谷 匡祐 「将軍の御三卿屋形御成-田安宗武の事例を中心に-」 栗原 健一 「近世後期における『山崩』と山村生活-新庄藩領南山村を事例に-」 長沼 秀明 「徳川義親の礼法論」 萱場 真仁 「暮らしを支える飛騨の山林」 今回は若手研究生・研究員による発表と、ベテラン研究員による発表がバランス良く配置されました。ベテラン研究員による発表は、内容やレジュメの作り方に至るまで、若手研究生の模範となるようなものでした。また、秋に開催予定の公開講座の中間発表では、パワーポイントを使って報告が行われました。発表後、フロアからは内容はもちろんのこと、パワーポイントの作り方に至るまで、様々な意見やアドバイスが出されました。 また、今回の研究集会では、若手研究者への指導的意味を込めて、竹内誠所長による「史料から人の生き方を読み解く-『岡田善休資料集』から-」と題した特別講話が設けられました。今回の特別講話は、寛政期の浅草寺雷門再建に関する様々な史料をもとに、それをめぐる人びとの関わりを紐解く内容でした。 講話の中で竹内所長は、目的や興味・関心を持ちながら史料を意識的に読むこと、および一つのテーマに関する史料だけを読むのではなく、視野を広く持ちながら多くの史料を読むことの重要さを、出席していた研究生・研究員へ向けて伝えていました。レジュメを使った竹内所長の講話は、普段なかなか拝聴できないこともあり、所長の経験に基づく重要なアドバイスに、出席者は熱心に耳を傾けていました。
|
3月4日(金)に非常勤研究員・研究生による研究発表が、豊島区民センター 第13会議室(豊島区東池袋)にて実施されました。今回の研究集会では、関東近郊諸藩の林政と薪炭生産から地域的特質を解明しようとするものや、当研究所所蔵史料を使用した尾張藩研究などが見られました。 桐生 海正 「小田原藩国産方役所と御林炭生産」 塚田 沙也加 「御七夜御祝における贈答儀礼-「若君様御誕生ニ付雑留」を通じて-」 高木 謙一 「近世後期佐倉牧における林産資源の管理と活用-佐倉藩の専売制と周辺村々の動向-」 橋本 佐保 「京都学習院の丁祭-幕末公家・朝廷の孔子祭祀の一形態-」 川島 孝一 「『源敬様御代御記録』について-主な記事の紹介-」 渋谷 葉子 「徳川林政史研究所所蔵「東武官邸記」について」 各発表後の質疑応答では、研究内容に関する質問や意見はもちろん、史料の扱い方や具体的な研究方法に関するアドバイスも多く出されました。 また、今回の研究集会では、特任研究員の松尾美惠子先生による「史料の読み方・歴史の捉え方-研究生へのメッセージ-」と題した特別講話が設けられました。今回の特別講話では、天下祭や絵島事件に関する史料を具体的に挙げながら、歴史像を再構築する方法についてお話いただきました。 松尾先生は、歴史像を構築するには一つの専門分野にこだわるのではなく問題意識を広く捉えること、そして幅広い視野を持って史料を読むことが重要であると研究生に向けて伝えていました。普段拝聴することのできない先生からの貴重なアドバイスに、出席していた研究生は熱心に耳を傾けていました。
|
11月20日(金)に、当研究所研究員の研究発表会が徳川林政史研究所閲覧室にて実施されました。 まず、萱場真仁「近世後期から近代における屏風山と地域社会」の発表が行われました。内容は、津軽半島西海岸に広がる海岸砂防林の「屏風山」が近世から近代にかけてどのように変化したのかということを、植林に従事した野呂家の活動に焦点を当てて再検討したものでした。 続いて、藤田英昭「慶応三年における尾張藩の内部事情」の発表が行われました。内容は、慶応3年末から4年初めにかけて、新政権の樹立に参画し、「勤王」に藩論を統一していくまでの尾張藩が抱えた問題点や克服すべき課題を考察したものでした。 今回の発表会には、所長・副所長、特任研究員の松尾美惠子先生をはじめ、7名が出席しました。発表終了後には質疑応答がなされ、藩の林政や史料の性格など、内容に関する質問のほか、今回の研究成果を論文等に発表するにあたっての意見やアドバイスが多く出されました。
|
10月30日(金)に日本学術振興会特別研究員の芳賀和樹氏と、非常勤研究生の髙木謙一氏による研究発表が、徳川林政史研究所にて実施されました。出席者は所長・副所長、特任研究員である松尾美惠子先生以下、8名です。 まず、芳賀和樹氏は、「秋田藩における19世紀林政改革の基調-「山林取立」政策の立案と展開-」と題して発表を行いました。内容は、文化期に展開する秋田藩の林政改革を、木山方によって推進された「山林取立」政策を中心に再検討したものでした。 続いて、髙木謙一氏は「近世牧周辺村々における林産資源の管理と利用-文政期以降を中心に-」の発表が行われました。内容は、幕府による佐倉牧の開発が材木資源開発に係る政策と捉え直し、その政策が周辺村々の経済活動にどのような影響を及ぼしたのか検討していきました。 今回の発表は、いずれも19世紀における社会変容のなかで、幕府や藩が森林をどのように捉え、扱おうとしていたかを考えるうえで非常に興味深い内容でした。それぞれの発表終了後には質疑応答がなされ、史料の語句や解釈をはじめ、内容に踏み込んだ質問や意見が出されました。
|
8月10日(月)に今年度研究協力員となっている坂本達彦氏による研究発表が、徳川林政史研究所にて実施されました。 今回の発表は「信州高島藩御林における盗伐取締り-近世後期を中心に-」というタイトルで行われました。内容は、近世高島藩において、御林の管理を担っていた林見(はやしみ)の世襲のあり方や盗伐取締の事例などを検討し、これを通じて藩の山林管理の姿勢を明らかにしようとするものでした。 今回の発表会では、所長、副所長をはじめ9名が出席し、近世高島藩の林政のあり方や藩の御用材伐り出しの実態などについて、質問や意見が多く出されました。 |
7月31日(金)に非常勤研究員・研究生による研究発表が、公益財団法人 上廣倫理財団UFホール(千代田区三番町)にて実施されました。今回は特に関東地方をフィールドにした若手研究生の発表が多く、個々の内容を通じて当該地域の支配のあり方について考えさせられるものでした。 出野 雄也 「近世中期における幕府・忍藩の河川支配の分掌-新堤築足と圦桶新設を事例に-」 西田 安里 「化政期における白河藩と海防-文政5年イギリス船来航を事例に-」 櫻庭 茂大 「明治初期における一農民の新聞投書と建白-太陽暦への改暦に対する意見を中心に-」 藤井 明広 「幕末期、改革組合村大惣代の「探索御用」と関東取締出役 -上総国加茂村組合大惣代池田利左衛門の動向を中心に-」 吉成 香澄 「将軍代替における将軍への御祝儀献上について」 栗原 健一 「幕末期における「郡中」の村の「買食之者」救済-出羽国村山郡の新庄藩飛地を事例に-」 特任研究員の松尾美恵子先生が総括されていたように、大きな枠組みや流れの中で、個別実証研究がどのように位置づけられるのか、常に意識しながら研究を進めていく必要性を改めて考えさせられる研究集会だったように思います。 また、今回の研究集会では、若手研究者への指導的意味を込めて、深井雅海副所長による「江戸城という政治空間-日常的な政治運営と本丸御殿-」と題した特別講話が設けられ、文字史料だけではなく、絵図(御殿図)を用いながら、緻密かつ実証的に研究を進めていく方法について学びました。 副所長の講話は、普段はなかなか拝聴する機会がないだけに、出席していた研究員・研究生は熱心にメモをとるなどして、授業さながらに耳を傾けていました。講話終了後には質疑・応答の時間もあり、出席者から意見や質問が活発に出されました。
|
7月29日(金)に非常勤研究員・研究生による研究発表が、公益財団法人 上廣倫理財団UFホール(千代田区三番町)にて実施されました。当日の発表論題は以下の通りです。 仲泉 剛 「近世後期における江戸勤番武士の統制とその実態 -加賀藩江戸勤番武士の外出行動を中心に-」 柴田 愛 「熊本藩の江戸湾警備-警備諸藩とのつながりを中心に-」 池ノ谷 匡祐 「将軍の御三卿屋形御成-田安宗武の事例を中心に-」 栗原 健一 「近世後期における『山崩』と山村生活-新庄藩領南山村を事例に-」 長沼 秀明 「徳川義親の礼法論」 萱場 真仁 「暮らしを支える飛騨の山林」 今回は若手研究生・研究員による発表と、ベテラン研究員による発表がバランス良く配置されました。ベテラン研究員による発表は、内容やレジュメの作り方に至るまで、若手研究生の模範となるようなものでした。また、秋に開催予定の公開講座の中間発表では、パワーポイントを使って報告が行われました。発表後、フロアからは内容はもちろんのこと、パワーポイントの作り方に至るまで、様々な意見やアドバイスが出されました。 また、今回の研究集会では、若手研究者への指導的意味を込めて、竹内誠所長による「史料から人の生き方を読み解く-『岡田善休資料集』から-」と題した特別講話が設けられました。今回の特別講話は、寛政期の浅草寺雷門再建に関する様々な史料をもとに、それをめぐる人びとの関わりを紐解く内容でした。 講話の中で竹内所長は、目的や興味・関心を持ちながら史料を意識的に読むこと、および一つのテーマに関する史料だけを読むのではなく、視野を広く持ちながら多くの史料を読むことの重要さを、出席していた研究生・研究員へ向けて伝えていました。レジュメを使った竹内所長の講話は、普段なかなか拝聴できないこともあり、所長の経験に基づく重要なアドバイスに、出席者は熱心に耳を傾けていました。
|
3月6日(金)に非常勤研究員・研究生による研究発表が、豊島区立勤労福祉会館(豊島区西池袋)にて実施されました。内容は以下の通りです。今回も尾張藩、幕政史、大奥研究など、多彩なテーマで研究報告がありました。 今回は、若手からベテランまで、例年よりも報告者が多くいたため、一人にあてられる報告時間が25分しかありませんでした。そのせいか、時間内に報告を終えられない例も若手を中心に見られましたが、時間厳守は集団行動の基本です。調べた内容をすべて盛り込むのではなく、自分の主張をいかに時間内にまとめられるか、発表技術を磨く必要性を感じた研究集会でした。 滝口 正哉 「町奉行所与力同心の文化活動」 浦井 祥子 「輪王寺宮の権威と新宮のあり方-『浅草寺日記』と公遵法親王を中心に-」 塚田 沙也加 「献上儀礼と享保七年の献上物規制における尾張徳川家の対応」 井浪 直人 「近世武家社会と献上儀礼-尾張藩における万石以上の陪臣を事例として-」 中村 洋子 「『浅草寺日記』に見る唐銅奉納物の造立経緯-万字屋伊與奉納一件を中心に-」 川島 孝一 「近世香取神宮の修理料について」 桐生 海正 「最上徳内と蝋製法の展開-文化・文政期の動向-」 高田 綾子 「江戸幕府奏者番の選任基準-石高・殿席・家筋を中心に-」 渋谷 葉子 「江戸城『大奥』女性と御用屋敷」
|
11月28日(金)に研究員による研究発表が、徳川林政史研究所にて実施されました。 まず、萱場真仁「近世弘前藩領における「田山」と水源涵養林」の発表が行われました。内容は、近世弘前藩領内における「田山」をはじめとする水源涵養林について考察を加えたものでした。続いて、藤田英昭「徳川慶勝の上京と政治的立場-文久三年を中心に-」の発表が行われました。内容は、徳川慶勝の京都における政治的立場について、新出史料をもとに検討したものでした。 今回の発表会では、副所長である深井雅海先生、特任研究員の松尾美惠子先生から、特に貴重なご意見・ご指摘をいただきました。発表内容は今回出された意見などを踏まえて、論文化されることを期待したいと思います。 |
10月31日(金)に非常勤研究員・研究生による研究発表が、徳川林政史研究所閲覧室にて実施されました。内容は以下の通りです。今回は副所長をはじめ7名が出席し、出席者から様々な質問や意見が出されました。 高木 謙一 「近世牧周辺村々における林産物資源の管理と利用」 芳賀 和樹 「江戸時代の森林管理と国土保全-秋田藩を中心に-」 長沼 秀明 「徳川義禮の英国留学-ユニテリアン告白の意味-」 |
8月13日(水)に今年度研究協力員となっている坂本達彦氏による研究発表が、徳川林政史研究所閲覧室にて実施されました。発表は「近世後期における幕府林政の展開-上州山中領を事例に-」というタイトルで行われました。今回は所長、副所長をはじめ6名が出席し、坂本氏の発表に対して出席者から質問や意見が多く出されました。
|
8月1日(金)に研究員・非常勤研究員・研究生による研究発表が、公益財団法人 上廣倫理財団理UFホール(千代田区三番町)にて実施されました。内容は以下の通りです。今年度も林政史関係はもとより、尾張藩、幕政史、地域史、大奥研究など、多彩なテーマで報告が行われました。所長・副所長による研究指導をはじめ、フロアから質問や意見が多く出されました。最後は特任研究員の松尾美惠子先生から、研究発表者ひとりひとりに励みになる講評をいただきました。 橋本 佐保 「よしの冊子諸写本の比較」 井浪 直人 「近世武家社会と献上儀礼―尾張藩年寄渡辺半蔵家の事例を中心に―」 櫻庭 茂大 「近世後期における一農民の対外観―『禦蠻策』を事例に―」 萱場 真仁 「近世弘前藩領における水源涵養と田山」 吉成 香澄 「大奥への献上の手続きと承認基準について」 栗原 健一 「近世山村地域の形成過程ー出羽国秋田郡小猿部地域を事例に―」 芳賀 和樹 「御林から官林へ―受け継がれた資源・人材・記録―」 藤田 英昭 「治山治水と民衆の力―金原明善とその周辺―」
|
閲覧日:
火曜日・水曜日10:00~16:30
*閲覧をご希望の場合は、事前に申請が必要です。
閲覧申請はこちら
*休日・祝日および、8/10~8/20、12/20~1/10、3/20~4/10は閲覧を休止します。